デンマーク発の成人教育機関 フォルケホイスコーレとは?

フォルケホイスコーレは1840年代にデンマークで生まれたユニークな教育制度です。

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デンマークの教育者で哲学者、牧師で詩人でもあったニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィ(ニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィ - Wikipedia)が提唱したのが始まりで、彼を支持していたクリステン・コルや弟子たちによってデンマーク中に広がって行きました。

現在デンマークに約70校、北欧全域でいうと300校以上も存在し、その特色は学校によって様々。

しかし、全フォルケホイスコーレに共通する大きな特徴は

  • 17歳半以上なら国籍、年齢、学歴問わず誰でも入れること
  • 試験・評価・成績が無いこと
  • 全寮制であること(先生も含む)

そして「共同生活で出会う人々との対話を重視する」ということです。

グルントヴィは「生きた言葉」による対話がとても大切だと考えました。フォルケホイスコーレでは多種多様な科目(音楽や映画、写真、福祉、演劇など他にもたくさん)の中から好きなものを選択でき、様々なことにチャレンジできますが、その中心には「対話」があります。そのなかで

“自分に何が向いているのか?”
“自分にはどんな才能があるのか?”
“自分は何に喜びを感じるのか?” 

を考えていきます。試験や成績がない代わりに友人や先生との寝食を共にし(寄宿制)関わり合い、自分自身について学び、人間的に成長する。それがフォルケホイスコーレでの学びなのです。

この独自の教育観からこの学校は「生のための学校」と呼ばれることがあります。

 

対話」と「共生

19世紀、ドイツとの敗戦により弱小国へと転落したデンマークを教育によって立て直そうとしたグルントヴィですが、彼がフォルケホイスコーレの教育において最も意識したのが机上の知識伝達ではなく、対話を通した実践的な体験に根ざした教育でした。
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教師から生徒への知識の一方通行ではなく、教師と生徒が話し合いながら学びを進めていくというスタイルです。こういった教育のあり方は国民の姿勢を能動的なものへと大きく変え、現在のデンマーク社会を貫く民主主義の精神を形成していったと言われています。

何故グルントヴィがここまで対話にこだわったかというと、それは彼が若かった頃、ラテン語学校で知識偏重型の詰め込み教育を受けた経験が影響していると思われます。グルントヴィは書物中心の暗記や試験のための勉強を強い、そして権威的で一方的な教育をする学校を「死の学校」と言って批判しました。そして学校は「生きた言葉」による「対話」で、異なった者同士が相互に啓発しあい、自己の生の使命を自覚していく場所であるべき、という考えを確立し、フォルケホイスコーレの構想に至ったのです。

 

ここで質問コーナー!

17歳半以上なら誰でも入れるそうだけど、実際にはどんな人が来るんですか?

大使館広報担当Nさん

「フォルケホイスコーレを利用する人には大きく2グループあって、1つ目は高校卒業後に約半年間通うグループです。私もこれでした。目的はこれからの進路を決めるか、または大学で本格的に勉強する前の休み期間ですね。リフレッシュや補充のような…。もう一方は高校で何か問題を抱えた人や、ドラッグやアルコールによる問題を抱えた人、もしくは犯罪歴を持つ人のグループです。彼らはもう一度人生をやり直すためにフォルケホイスコーレに通います。フォルケホイスコーレは若い人たちや何か問題を抱えた人たちに良い道や他の生き方を示すんです。」

S大生 H

「高校と大学の間に自分を見つめ直せる時間がゆっくり取れるのは良いですね!問題を抱えた生徒たちがフォルケでどうやってにそれを乗り越えていくのかとても興味深いです。」

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さらに詳しく知りたい人は…

インターネットサイト

IFAS (アイファス)・フォルケホイスコーレ検索(日本語)

日本人が運営しているフォルケホイスコーレ紹介サイト。実際に行った人のおすすめなども紹介されています。

ビネバル出版/北欧留学情報センター(日本語)

北欧留学の情報を提供しているサイトです。

(日本語)

日本人におすすめのフォルケホイスコーレを10校ほどとても詳しく紹介してくれています。

 

書籍

 

  • 『コルの「子供の学校論」』新評論